2020年7月5日日曜日

第2章 文を美しくするテクニック(1)

「です、ます」と「だ、である」

 文末が「です、ます」で終わる文と、「だ、である」で終わる文を混在させないというのが、テクニック一歩目です。言うまでもなく、「です、ます」調はていねいな言葉使いで、「だ、である」調は断定的な言い回しになります。一つの文章のなかでは、原則として統一する必要があります。
読み手の顔が見えている文書では「です、ます」調を使います。プライベートかビジネスかを問わず、手紙や電子メールは「です、ます」が基本です。読み手の顔を意識する必要のない文書では「だ、である」調が多くなります。代表的なものが新聞です。新聞記事は事実を正確に伝えることが目的ですから、読み手の顔を意識する必要はありません。ただし、新聞においても、投書欄への回答や誤報への謝罪文など、特定の読者に対するメッセージの意味合いがあると「です、ます」に変わる場合があります。学術論文は真理を追究するための文章ですから、読み手の顔など思い浮かべる必要はありません。当然「だ、である」です。小説も多くのものは「だ、である」ですね。このブログは「です、ます」で書いていますが、小説との違いは何なのでしょう。小説は、作者が読者に対して何かを語りかけているのではなく、作品のなかで一つの虚構の世界を描いています。あくまでも、作者の視線の先は登場人物やその所作であって、読者の顔ではないのです。
一方、私はこのブログを執筆する際(今もそうですが)、読んでいただいている皆さんがどんな方だろう、社会人か学生か、年齢は、性別は、と想像しています。その全ての方々に納得していただけるような内容にしたいと考えながら筆を進めています。したがって、自然に「です、ます」調になるのです。
このブログへの私の取り組み姿勢が違っていたら、「だ、である」調で書いていたかもしれません。次の例文のような感じです。
一方、私はこのブログを執筆する際(今もそうだが)、読者がどんな人物か、社会人か学生か、年齢は、性別は、と想像することはない。その全てに納得してもらえる内容にするのは諦めて筆を進めている。したがって、自然に「だ、である」調になるのだ。
小中学校での作文、大学受験での小論文、大学での課題レポート、就職試験のエントリーシートなどは、「です、ます」「だ、である」の双方を使用することができます。どちらを選択するかはたいへん重要です。文章の雰囲気ががらりと変わってしまうからです。「です、ます」で記述した文章は、穏やかに受けとめられる一方でインパクトに欠けます。自分の意見を強く主張したいような場合は「だ、である」を選択する方が得策です。
私は、美しい日本語を書けるようになりたいという方に、「まず新聞を読むことが大切です」と話しています。
この文について、「新聞を読むことが大切だ」という考えを強調するために「だ、である」調への変更を行います。文末を「です、ます」から「だ、である」に置き換えると次のようになります。
私は、美しい日本語を書けるようになりたいという方に、「まず新聞を読むことが大切です」と話している。
一見、「だ、である」調の文ですが、これでは特長を生かしきれていません。強調したい言葉を残して、それ以外の言葉はできる限り減らしましょう。
美しい日本語を書きたいなら、まず新聞を読むことが大切である。
ずいぶん雰囲気が変わります。必要のない装飾をそぎ落とすのが「だ、である」調の基本なのです。また、そぎ落した結果、字数も大幅に減少します。字数制限のある文章では、書きたいことが少なくて悩んだら「です、ます」調、多すぎて困ったら「だ、である」調を採用するとよいでしょう。
さて、まれですが、あえて「です、ます」と「だ、である」を混在させるケースがありますので、確認しておきます。

① 場面を変える

東日本大震災の発生から、間もなく5年間が過ぎようとしています。私は東京都内に勤務先と自宅があり、直接の被害を受けたわけではありませんが、あの日の記憶を一生忘れることはないでしょう。
三月十一日。午後二時四十六分。ビルの七階でデスクに向かっていた私を、突然の横揺れが襲った。地震だ。それもかつて経験したことのない大きさだ。「デスクの下へ隠れろ」誰かの叫び声が響き渡った。でも、その声を聴く前に、多くの同僚は既にデスクの下に潜り込んで小さくなっていた。
横揺れは長時間続きました。可動式のキャビネットが「ガシャーン、ガシャーン」と不気味な金属音をたてています。いよいよ首都直下地震が来たのか。そう思った人が多いはずです。まさか、これだけの揺れが、遠く離れた東北沖を震源とするものとは想像もつきませんでした。

さて、この文章を読んでどう感じられましたか。震災を思い出してくださいという意味ではありません。形式のことを訊ねています。第一、第三段落は「です、ます」調で書かれ、第二段落は「だ、である」調で書かれています。混在していますが、違和感があるでしょうか。多くの方は違和感なく読まれたことと思います。
この文章は、現在の記述から始まり、第二段落で五年前に遡ります。大きな場面転換です。しかも重大災害が発生した場面です。この場面転換と重大災害を表現するうえで、「だ、である」調への変更がぴったりはまっています。第三段落は、第二段落に引き続き五年前の記述ですが、第二段落が当事者の視点で書かれているのに対して、客観的な書き方に変わっています。「です、ます」調に戻すのもうなずけます。
このように、「です、ます」と「だ、である」を混在させるというおきて破りが、他にない効果を生み出すということを知っておいてください。

② 箇条書き


箇条書きの効用については別項目で解説しますが、「です、ます」調の文章のなかでも、箇条書きの部分は「だ、である」調にするのが原則です。実例を見てください。

一時停止の標識がある交差点では、次の手順で運転してください。これを守らないと、自分では一時停止したつもりでも認められず、交通違反で検挙される恐れがあります。
   ☆ 停止線の手前で完全に停止する。
ただし、停止線の位置からは左右を見渡せない交差点が多いのです。そこで、
   ☆ ゆっくりと前進し、左右を見渡せる位置まできたら再度停止して左右の安全を
     確認する。
   ☆ 安全が確認できたら静かに発進する。
停止してから左右の安全確認をすると3秒かかるらしく、警察官がストップウォッチを持って待ち構えていたという話を聞いたことがあります。

このように、「です、ます」調と「だ、である」調を組み合わせることによって、箇条書きにして伝えたい内容を強調することができるのです。

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