2020年10月31日土曜日

こぼれ話

 △△議会議員候補、○○党推薦の山田太郎でございます。山田太郎が皆様に最後のお願いにうかがいました。山田太郎をよろしくお願いいたします。山田太郎にご投票をお願いいたします。

投票日が近付くと、選挙カーからの候補者の名前の連呼が始まります。本項目で取り上げた「繰り返し」と、選挙運動で行われる「連呼」は似て非なるものです。繰り返しが、文の美しさを犠牲にしても、あえて特定の効果を狙って行う文章作成の技法であるのに対して、「連呼」はそもそも美しさも効果も関係なく、候補者の名前を記憶してほしいという、ただ一点を目的にしているからです。

目的が明らかですから「連呼」にも効率の良いやり方がありそうです。選挙カーからの声を、真剣に耳をすませて聞いている人はいないでしょうから、余分な言葉を省いて、ほんとうに伝えたい、覚えてもらいたい言葉を連呼するべきでしょう。

例文では、候補者中に山田姓が一人であれば、名前の太郎まで覚えてもらう必要はありません。投票所に行けば候補者の一覧が掲示されていますので、フルネームはそこで確認すればよいのです。難しい姓の場合は、なおさら有権者に記憶してもらう範囲を絞り込んで、確実性を高める必要があります。どの政党の推薦を受けているかが選挙結果に大きな影響を与えると予想されるなら、政党名と一緒に記憶してもらわねばなりません。複数の議会選挙や首長選挙が同時に行われる場合は、どの選挙の候補者かという情報も必要です。同時選挙の「県議会議員選挙」に立候補し、民民党推薦であることを強調したい山田太郎さんとして、連呼の原稿を再構成してみましょう。

 山田、山田、県議会選候補の山田でございます。山田、山田、民民党推薦の山田でございます。山田、山田、山田太郎をよろしくお願いいたします。

最初の例文よりも短い文章のなかで、名前の連呼を4回から9回に増やすことができました。県議会選挙に立候補していること、民民党推薦であることも、より明確にできたと思います。各文の前半部の作りを統一することにより、リズム感も出てきて、全体として聞きやすくなっています。

結果として、「繰り返し」とは似て非なる「連呼」においても、「重要な言葉の繰り返し」「リズム感を作る」といった技を生かせることがわかりました。ぜひ、選挙運動のなかで活用していただきたいものです。

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